【2020年版】WindowsとMacはどちらを選べばいいか考えてみた

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WindowsとMacはどちらがいいのか、という宗教論争は、はるか昔から繰り返し議論されてきた論点だ。熱心なMac信者は、これまでさんざんWindowsをダサいとけなしてきたし、Windows信者も、Macは高いだけで使えないとこき下ろしてきた。

私はWindowsとMacの両方を使ってきたし、両方が好きだと思っている。

なので、それぞれの批判には、「確かにそうだよなぁ」と共感できる部分もあれば、「それは実際は違うよ」と思う部分もある。加えて、IT業界は日進月歩なので、従来は当てはまった批判でも、現在は改善されて状況が変わっているものもある。

せっかくなので、現時点で私が感じているWindowsとMacの素晴らしい点を挙げて、WindowsとMacはどちらを選ぶのがいいのかを考え、まとめてみることにした。

Windowsが素晴らしいと思う部分

まずは、Windowsから考えてみよう。

大多数の人はWindowsを使っている

いきなりだが、Windowsは、大多数の人が使っている。これ最大の利点だ。コンピューター業界では、とにかく「みんなが使っている」というのが非常に大切で、シェア1位を取って、デファクトスタンダード(事実上の標準)を取ったものが圧倒的に普及する。蓮舫さんじゃないけど、2位じゃダメなのだ。

もうこの1点だけで、少なくとも初心者に勧めるべきはMacではなくWindowsだと私は思う。「Macは操作が簡単だから、初心者こそMacがいい」なんていう意見も聞くが、結局、大多数が使っているものに乗っかっておいた方がいろいろと便利だ。何か困ったことがあったとき、Macについては分からないがWindowsなら分かる、という人はいっぱいいる。「パソコンでこれをやってみたいな」と思ったときに、それを実現するための手段も情報も、Windowsならたくさん存在する。パソコン教室だって、Windowsを前提としているところがほとんどだ。

そして使う人が多いと、必然的にアプリだって周辺機器だって、Windowsが中心となる。

最近はWindowsとMacの両方に対応しているものも多いが、まだまだ様々な分野でWindowsにしか対応していないアプリや周辺機器はたくさんある。本当に、Windowsでないとお話にならないという分野も多い。だから、普段はMacをメインに使っているけど、どうしてもWindowsも必要とする人もたくさんいるはずだ(私もその一人だ)。開発者からすれば、使う人が多いOSに乗っかりたいと思うのは当然なわけで、この点はどう考えてもWindowsの方が有利だ。

また、Macには一応対応しているけど、Windows版と比べるとできる機能が少ない、なんてケースもざらにある。私が使っているウイルス対策ソフトや、日本語変換ソフトのATOK、クラウド同期できるメモ帳のEvernote、プリンターのユーティリティソフトなどは、それぞれWindows版とMac版の両方を使っているが、Windows版の方が多機能だと感じることが多い。

Windowsにはフリーソフトも多い。何か不便に思ったとき、Windowsであればほぼ必ずそれを解消するためのユーティリティを誰かが開発していて、しかも無料で提供しているということが多い。これは、Windowsコミュニティの特性というのもあるだろうけれど、やっぱりユーザーが多いから、という単純な部分も大きいだろう。

とにかく、Windowsは圧倒的に普及している。Apple信者である私も、ここは認めざるを得ない。

ハードの選択肢が多い

Macと違って、Windowsはいろいろなメーカーが作っているので、その分いろいろな選択肢がある。

とにかく安さを重視するなら、5万円以内でもそこそこのパソコンが買えるし、1万円以下のWindowsタブレットだって売られている。値段よりも付加価値重視だというのなら、ノートパソコンにもタブレットにもなる2in1のパソコンや、テレビが録画できるパソコン、モバイル通信が内蔵されたパソコン、持ち運びに最適な頑丈で軽いパソコンなど、個性豊かな製品がたくさんある。

極限までこだわりたい人は、ケースからそれぞれのパーツまで好きなものを選び、自作してしまうという選択肢すらある。

競合が多い分だけ価格もこなれやすく、多くの場合はMacよりもコストパフォーマンスがいい。少ない値段で、より性能のよいパソコンが買いやすいというのは正義だと思う。

一方でMacは、デスクトップ型としてはiMac、iMac Pro、Mac Pro、Mac miniが、ノートブック型としてはMacBook Air、MacBook Proしか選択肢がない。いずれも光学ドライブは外付けしか選択肢がなかったり、各種ポートを使うために変換アダプタが必要だったりするなど、Windows機と比較するとハード的な制約も多い。また、タッチパネルやタッチペン、モバイル通信などの機能に対応した機種もない。それにもかかわらず、Windowsと比べると割高であることが多い。

Microsoft Officeが快適

Microsoft Office自体はMacでも使えるが、使い勝手はWindows版の方が快適だと思う。

まぁ、昔と比べれば、Windows版とMac版の差異は確実に小さくなっている。最新版では互換性がかなり改善されていて、パフォーマンスについてはMac版でも遜色ないし、操作方法もかなり共通化されてきた。

それでも、設定画面の出し方とか、印刷プレビューの機能とか、貼り付けのオプションとか、そういう細かい部分はやっぱりWindows版とMac版では違っていて、Windows版の方が多機能で使いやすい

ショートカットキーについても、わりとWindows版とMac版で共通化が図られるようになったが、Mac版で致命的なのが、Altキーを使ったショートカットが使えないこと。もうこの時点で魅力半減だ。オートSUMを行う「Alt+Shift+=」とか、値のみ貼り付けを行う「Alt→E→S→V」などはMacでは使えない。Ctrlキーを使ったショートカットも、一部はmacOSで使用されるショートカットと被るために使えない。そしてこのショートカット問題は、macOSの制約・仕様によるもので、Microsoft側でどうこうできる問題ではない。

代わりに、Mac版で使える別のショートカットが用意されていることもある。とはいえ、多くの職場ではWindows版のOfficeが使われるので、Windows版とMac版でそれぞれ違うショートカットキーを覚えなければならないのは面倒だ。それに、困ったときに調べるネット上の情報は、Windows向けのものが圧倒的に多い。

また、マクロを使うのであれば、Windows版を使うべきだ。最新版のOfficeならMac版でもマクロは動くようになったが、Windows版との互換性が完全に担保されているわけではない。そもそも、巷にあふれる情報はWindows版を前提としていて、Mac版の情報はほとんどない。

もちろんMac版のOfficeで困らない人も多いだろうが、個人的にはMicrosoft OfficeはやっぱりWindowsで使うべきだと思っている。これがデファクトスタンダードだからだ。

ゲーム・VRに強い

ゲームは圧倒的にWindowsが有利。まず、Windowsしか対応していないゲームが多い。Mac版のゲームだってあるし、Apple Arcadeといった期待できるサービスもあるが、少なくとも現時点において有名ゲームは軒並みWindows前提。もうこの時点でMacは終了。

Parallels Desktopのような仮想化ソフトなり、Boot Campなりを使えば、WindowsゲームをMacで動かすことは可能だけど、どう考えてもコスト面・パフォーマンス面を考えるとWindows実機を買うか、PS4を買った方がいい。

ゲームに関連していうと、最近話題のVRについても、Windowsの方が有利だ。Appleもだいぶ力を入れ始めてはいるが、対応しているVRゴーグルは限られているし、そもそも対応するMacも高価なハイスペックのものに限られている。無理してMacで環境を整えるのなら、やっぱりWindows機を買うか、PlayStation VRを買った方がいい。

3DCG系・映像系に強い

Macというと、クリエイティブな分野で強いイメージがあるが、プロ向けの3DCG(3次元コンピューターグラフィックス)の分野では、Windowsの方が強いといえそうだ。

大きな理由としては、グラフィックボードの違いがある。大きく分けてグラフィックボードにはNVIDIA系とAMD系の2種類がある。どちらも性能面で大きな違いはないのだが、映像処理などに使われる「CUDA」という環境がNVIDIA系でしか動かないという事情から、多くのCGソフトがサポートしているのは、前者のNVIDIA系のみ。CPUならIntelだろうとAMDだろうと好きなものを使えばいいが、3DCGの分野の場合、グラフィックボードに関してはNVIDIA系が必須といえる。

しかし、現在のAppleとNVIDIAは仲が悪く、Macに搭載されているグラフィックボードは、AMDのものしか選べない。純正オプションとして選択肢がないとかいうレベルではなく、そもそもNVIDIAが最新のmacOSをサポートしていないため、仮に外付けのeGPUをMacに繋げても動かないという、絶望的な状況だ。つまり、3DCGを行うのならMacは向いていないということだ。

また、映像制作の分野でも、近頃はWindowsが若干ではあるが優勢だ。かつては、Macでしか使えない映像編集ソフトの「Final Cut Pro」がプロの制作現場でも多く使われていたが、Appleの方針転換により多くのプロユーザーが他社ソフトに流出。映像制作業界におけるMacの地位が低下してしまった。

現在はAdobeのPremiereとAfter Effectsが覇権を握りつつあり、これはWindowsでもMacでも使えるが、利用できるエフェクトはWindows版の方が多い。(ただ、決定的な差というわけではなく、Macでも十分使える。)

3DCG制作ソフトにしろ、映像編集ソフトにしろ、Windowsしか動かないソフトも多い。macOS版も用意されているものもあるが、逆にいうとMacしか対応していないソフトはほとんどないため、「だったらWindowsでいいじゃん」となるのは致し方ない。

AeroSnap機能が恐ろしく便利

(パソコンと比べれば)画面が小さいタブレットPCは、基本的に画面全体に一つのアプリを表示して使うのが一般的だ。それに対しパソコンは、ブラウザとエディタを並べて操作したり、異なるドキュメントを並べて表示して比較してコピペしたりなど、画面サイズを生かして複数のウィンドウを並べて作業することがある。

そんなとき、WindowsならばAeroSnap機能があるから、簡単に複数のウィンドウを整理して表示することができる。

操作方法は、ウィンドウのタイトルバーをドラッグして、画面の端に持っていくだけ。わりと直感的に操作することが可能だ。上にスナップすれば最大化するし、左右の端にスナップすれば画面を左右に分割できる。その状態で境界線をドラッグすれば、それぞれのアプリの横幅も自動で調整してくれる。

ドラッグ操作すら面倒ということなら、Windowsキーと矢印キーのショートカットを使って、サクサクと操作することもできる。上下に分割し、4分の1の大きさにすることだって可能だ。

一方Macにも、Split Viewと呼ばれる似たような機能はある。

MacのSplit Viewへの切り替え画面

しかし、フルスクリーン状態になってしまうので、画面上部にあるメニューバーと、下部にあるDockが消えてしまう。iPadと操作感を統一したいという意図は分かるが、個人的には使いにくい。(ただ、有料のユーティリティアプリを入れれば、Windowsとほぼ同じような操作感にはできる。)

さすがに「ウィンドウズ」というだけあって、ウィンドウをサクサク思い通りに操作できるのは気持ちがいい。この点は、さすがWindowsだ。

Macが素晴らしいと思う部分

Windowsについては以上。続いて、Macについて考えていこう。

ハードのデザインはダントツ

最近は、Windowsもデザインが優れたかっこいいハードが出ている。例えばMicrosoftのSurfaceは、Apple信者の自分から見てもかっこいいと思う。

それでも。やっぱりApple製品がいちばん美しい

私はiMacとMacBookを使用しているが、どちらも使う度に美しさに惚れ惚れしている。例えばこのiMac。「どんなに美人でも3日で飽きる」なんて言葉もあるが、私からすれば3日どころか3年経っても飽きない魅力がMacにはあると思う。

デスクトップ一体型のiMacと、純正キーボードとマウス

自分の部屋にiMacが置いてあるだけで、「買ってよかった……!」とうれしくなる。もちろんこれは好みによるところが大きいが、いかにもインスタ映えする部屋の写真には、おしゃれなインテリアに混ざって、たいていMacが置かれている。これは、Macのデザインが美しいことの証だろう。

「パソコンにデザインとか求めてねーよ」みたいな人も多いとは思うが、道具であるならば、テンションがあがるものを使いたい。所有する喜びを感じられるのは、Macならではだと思う。

Apple製品との連携

Macを含めたApple製品は、それぞれが美しく連携する。

例えば、iPhoneにかかってきた電話やSMS/MMSをMacで受けたり、Apple Watchと連携してMacのロックを解除したり、Sidecarを使ってiPadをMacの外付けディスプレイにしたり、複数のデバイス間でクリップボードを共有したり。

Apple製品同士で超高速にファイルのワイヤレス交換ができるAirDropもとても便利だし、Wi-Fiのパスワードの共有も簡単だし、Apple製品同士なら複雑なペアリング操作も不要だ。モバイル通信が内蔵されたMacがないことは前述の通りだが、代わりにInstant Hotspot機能によって、iPhoneを使ったテザリングによるインターネット接続・切断がMac側から簡単にできる。

どれも、一部の機能はWindowsでも実現できるが、Apple製品同士の連携ほど簡単で安定しているわけではなかったり、事前に導入のための手順が必要だったりする。

こうした連携の機能は、使ってみるまで何が便利なのか分からないものだ。事前にアプリを導入したり、複雑な設定が必要であったりすると、その機能は使われずして終わってしまうだろう。

Apple製品の連携は、誰でも簡単に、それこそ連携の機能があることを知らなくても、さりげなくAppleが便利に使えるお膳立てをしてくれる。少なくともiPhoneを持っているのであれば、Macを使う利点は感じられるはずだ。

画面が美しい

MacBook Proのディスプレイについて紹介しているAppleのウェブサイト

Macは、かなり早い段階からRetinaディスプレイと呼ばれる高精細なディスプレイを採用し、画面の美しさにはかなり定評がある。単に解像度が高いというわかりやすい部分だけではなく、Macに搭載されるディスプレイは、広い色域や視野角を持ち、ディスプレイそのものの性能も高い。macOSには以前から優れたカラーマネジメントシステムが搭載されていることも相まり、画面の美しさや再現性は、(カラーマネジメントシステムを導入していない一般的なモニターを有する)Windowsよりも優れているといえるだろう。

そして、macOSのユーザーインターフェースのデザインも美しい。Windowsも、XPの青と緑のタスクバー時代から比べればだいぶデザイン的にこなれたように思うが、アプリアイコンや設定画面のデザインは、macOSの方が洗練されていると思う。

OSのデザインについては個人的な好みもあるが、少なくともRetinaディスプレイ相当の高解像度ディスプレイへの対応は、macOSが他のどのOSよりも頭ひとつ抜けている。

Windowsでは、高解像度ディスプレイを使うとアイコンや文字がぼやけてしまったり、ボタンが小さく表示されたり、最悪の場合レイアウトがおかしくなってしまうアプリも多い。

また、ユーザーインターフェースの一部を半透明にして背景が透けて見える、といったデザインはWindowsにもMacにも見られるが、様々な場面で効果的に美しい処理がされているのはmacOSの方ではないだろうか。

加えて、macOSは文字が美しい。もともと搭載されている「ヒラギノ角ゴ」というフォントが美しいから、ということが大きいが、たとえWindowsに同じフォントを入れても、やはりMacの方が美しく表示される。macOSに搭載されているフォントレンダリングエンジンが優れているためだ。

総じて、WindowsよりもMacの方が、ハード・ソフトの両面において画面が美しい。優れたデザインと、ハードとソフトの最適化は、Appleが得意とするところだ。

コンピューターを使う場面のほとんどは、コンピューターの画面を見ていることに等しいだろう。つまり画面が美しいということは、コンピューターを使うほとんどの場面で美しさを感じられるということ。このフィーリングは、Macの利点といえるだろう。

質の高い純正アプリが多い

Windowsの純正アプリは、どちらかというとおまけ感が強いものが多いが、Macの純正アプリには質の高いものがたくさん揃っている。

カレンダー、メール、ブラウザなどの基本的なものはもちろんだが、撮影した写真や動画を管理する「写真」アプリ、お気に入りの音楽を管理するための「ミュージック」アプリ(旧iTunes)、Word・Excel・PowerPointに当たる「Pages」「Numbers」「Keynote」などが最初から搭載されている。

クリエイティブなことをしたい人のためには、動画編集のための「iMovie」、音楽制作のための「GarageBand」も無償で使える。どちらも、有償アプリ並みの機能が搭載されていて評価が高い。もし、物足りなくなれば、プロ向けアプリへのアップグレードの道も用意されている。

Macを買うとついてくる純正アプリは、どれもOSのおまけというレベルではなく、十分にメインアプリとして使える品質だ。これらのアプリはiPhoneやiPadにも提供されており、Apple純正クラウドサービスの「iCloud」を介して、複数のApple製品のデバイス間で同期することもできる。

「辞書」アプリには、スーパー大辞林とウィズダム英和・和英辞典が搭載されている。これだけでも、普通に買えば1万円近くするものだが、これも無償だ。

こうした質の高い純正アプリが最初から使えるというのは、Macの利点だ。

トラックパッドが使いやすい

Macを使っている人が口を揃えていうのが、Macのトラックパッドの使いやすさだ。私もMacのトラックパッドは、Windowsのそれよりも断然使いやすいと思っている。

ノートブック型のMacBook AirやMacBook Proには、同じ筐体サイズのWindows機よりもかなり大きなトラックパッドが搭載されている。iMacなどのデスクトップ向けにも、MagicTrackpadという大きなトラックパッドがオプションで用意されている。

この大きなトラックパッドを存分に生かしたジェスチャーがmacOSに用意されており、2本指でスクロールしたり、スマートフォンのようにピンチ操作をして拡大縮小を行ったりできる。3本指または4本指の操作により、デスクトップを表示したり、アプリ一覧を表示したり、複数のデスクトップを行き来したりなど、手の指だけでMacを自由自在に操ることができるのだ。

同様の機能は、昨今のWindows機にも徐々に搭載されてきており、若干Macの優位性は揺らぎつつある。それでも、スクロールや拡大縮小のスムーズさ、純正のジェスチャーの豊富さなどにおいて、まだまだMacの方が優れている。

iPhoneと同じように、スクロールして端っこにぶつかって「ぽよん」と跳ね返るエフェクトが用意されていたり、ある程度iPadとジェスチャー操作が統一されていたりなど、Apple製品ならば同じ感覚で使える、というのも利点だろう。

仮にあなたがトラックパッド派というなら、MagicMouseという、トラックパッドとマウスのいいとこ取りをしたマウスを使うこともできる。

プライバシー・セキュリティ対策がしっかりしている

まず前提として、Windowsであろうと、Macであろうと、OSのセキュリティ機能を過信せずにしっかりとウイルス対策ソフトを入れ、パスワードの使い回しをしない、信頼できないアプリは入れない、怪しいURLは開かないなど、しっかりとしたセキュリティ対策を徹底することが重要だ。Macを使っているから無条件で安心、ということはできない。

しかし、しっかりと対策をした上で、プライバシー・セキュリティ機能について考えてみると、Macには安心感がある。例えばApple T2チップが搭載されたMacであれば、Mac内のすべてのデータは自動的に暗号化され、セキュアブート機能によって不正なOSの起動をブロックすることが可能だ。盗聴を防ぐため、液晶パネルを閉じるとマイクが物理的に遮断される仕組みも導入されている。

近頃のAppleはかなりプライバシー・セキュリティ機能を重視しており、それを伝えるテレビCMまで流したことがある。そもそもAppleは、競合するMicrosoftやGoogleに先駆けて、ユーザーを必要以上に追跡する広告サービスをブロックしたり、センシティブな情報は端末内のみでデータを処理して保持したり、サードパーティソフトのアクセス権限を細かく設定できたりといった機能を追加してきた。

Appleは、あくまでもiPhoneやMacなどの魅力的なハードウェアを作り、それをたくさん売って稼ぐというビジネスモデルだ。MicrosoftやGoogle、Facebookのように広告やサービスを売る会社ではない。そのため、本音では個人情報がほしい他社とは違い、真逆のアプローチを取ることができる。

もちろん、だからといってWindowsは個人情報ダダ漏れ、ということでは全くないが、企業の収益構造や戦略を踏まえれば、相対的にMacの方が安心感があるという主張は、あながち間違ってはいないと思う。

また、かなり消極的な理由ではあるが、MacはWindowsよりも利用するユーザーが少ないため、ウイルスの攻撃対象として狙われにくいというのも利点だろう。

どっちもどっちと思う部分

システムの安定性やアップデート

これについては、Windows信者、Apple信者のそれぞれがお互いにお互いをけなしあっているが、最近はどちらもフリーズをすることはほとんど無くなっている。逆に、大規模な機能追加がある大型アップデートでは、WindowsもMacもそれなりに不具合を出しているので、どっちもどっちだ。

そもそも、安定しているかどうかは、入れているユーティリティの種類や、繋いでいる周辺機器などの環境に大きく左右されるため、両OSの安定性を客観的に比較することは難しい。Windowsの方が安定している、Macの方が安定している、という声に惑わされず、好きなものを使えばいい。

また、Windowsは勝手にアップデートして再起動されるから困る、みたいにいわれることがよくあるが、それはアクティブ時間の設定を適切に行えば回避できる。再起動を求められるアップデートはWindowsの方が多いように感じるが、それは頻繁に更新されていることの裏返しであり、必ずしも欠点とはいえないだろう。

搭載されているフォント

よく「Macはフォントが美しい」といわれる。前述したように、Macのフォント表示はきれいな上に、Macに標準搭載されている「ヒラギノ角ゴ」の評判がとてもいい。Macを使う大きな理由のひとつであることは間違いない。

一方で昔のWindowsは、少しフォント軽視なところがあり、有名フォントの劣化コピーをバンドルして批判されることもあった。広く使われてきた「MS明朝」「MSゴシック」も、決して美しいとはいえなかった。

ただ、最近のWindowsは頑張っていて、「游明朝体」「游ゴシック体」が標準のフォントとなって、悪名高い「MS明朝」「MSゴシック」からの脱却を図っている。(それでも、個人的にはMacの「ヒラギノ明朝」「ヒラギノ角ゴ」の方が好きだけど。)

また、Windowsのアップデートにより、モリサワ社の「BIZ UDフォント」や「UDデジタル教科書体」も標準で入るようになった。モリサワといえば、フォント界の超大御所。おそらくライセンス料もそれなりの額であることが予想される。それをWindowsが無償でバンドルということなのだから、素晴らしい。

これらのフォントはUDフォントと呼ばれ、ユニバーサルデザインの観点から、誰にとっても見やすいフォントを目指して開発されたものである。Appleは従来より、視覚・聴覚・操作が不自由な人に向けたアクセシビリティ機能を重視してきたが、日本語のUDフォントは標準搭載されていない。ここはむしろ、Windowsの方が優れている。

Macには信頼感のあるヒラギノだけでなく、フォントワークスなどのフォントベンダーから提供されているクオリティの高いフォントが複数搭載されている。ただ、その種類はあまり多いとはいえない。

Windowsにしろ、Macにしろ、それなりにデザインをしようと思ったら、結局別にフォントを揃える必要がある。

デザイン系・開発系の用途

私はデザイナーではないが、「グラフィックデザインをするならMacでしょ!」といわれることがある。印刷業界ではMacが標準だったことの名残で、多くの印刷所やデザイン事務所でMacが使われていたからだ。

しかし今では、Windowsでも全く問題なく仕事を進めることが可能だ。実際に、Windowsを使っているデザイナーもいる。MacでもWindowsでも、好きな方を使えばいい。(まぁ、自分がデザイナーだったとしたら、Macを使うけど。)

また、私はエンジニアではないが、「開発をするならMacでしょ!」といわれることがある。macOSはUNIXがベースであるため、bashやzshなどのシェルが動き、VimやEmacsなどのエディタが使えるなど、開発者が必要としている環境が簡単に構築できるあたりも支持される理由である(らしい)。

ただ、現在のWindowsでは、Windows Subsystem for Linux(WSL)という標準でLinuxが動く環境が用意されているため、上記のことはWindowsでも可能だ。MacでもWindowsでも、好きな方を使えばいい。(まぁ自分がエンジニアだったとしても、Macを使うけど。)

結論

好きな方を使えばいい。

……というと、この記事の意味が無くなってしまうので、私なりの結論を述べよう。

Windowsを使った方がいい人

まず、パソコンを使ったことがないレベルの初心者は、素直にWindowsを使った方がいいだろう。前述の通り、やはり大多数の人が使っているというのは非常に大きい。少数派であるがゆえに困ることや、諦めなければならないことはたくさんある。そういう部分に悩まされなくてもいいのは、初心者にとって大きなメリットだろう。

Microsoft Officeをバリバリ使う事務職や、3DCGクリエイターは、Windowsがなければ話にならない。その他、専門の業務ソフトなどを使う関係で、Windows環境が必ず必要になる人も、必然的にWindowsとなるだろう。

さしあたり、Windowsを使うことの大きなデメリットはない。特別Macに興味が無いのなら、合理的に考えればWindowsを使った方がいいだろう。

Macを使った方がいい人

では、Macを使った方がいい人はどんな人かというと、上記に当てはまらない、Macに興味がある人全員だ。

結局、この記事を書いていて思ったのは、Macのよさは感覚的な部分が大きいということ。Apple製品の連携とか、トラックパッドが使いやすいとか、Windowsよりも優れた部分もたくさんあるが、それが必須かといわれれば、そんなこともない。

ただ、Macを使っていると、美しくてテンションが上がる。

こういうコンピューターはなかなか無いのではないか。好きなブランドのバッグや服、道具などを使って気分がよくなる感覚と似ている。AppleやMacというブランドに少しでも興味があるのなら、試してみる価値はあるだろう。

また、Macでしか使えないアプリというのも存在する。特にデザイン系や知的生産系のアプリでは、Windows向けのものと比較して優れたアプリが多い印象だ。このあたりの分野に興味がある人は、特にMacをおすすめしたい。

Mac向けアプリは数は少ないものの、その品質は高いものが多い。特にアイコンやインターフェースなどのデザインは、Windowsよりも優れているものが多いと感じている。そしてRetinaディスプレイやダークモードへの対応など、Appleが提供する新機能にもしっかり対応しているものが多い。

迷ったら、両方使えばいい

Macであれば、その中にWindowsを入れることができる。試しにMacを買ってみて、使いにくいようならWindowsを入れてしまってもいいだろう。もしくは、仮想化ソフトを入れれば、WindowsとmacOSを両方同時に使うこともできる。

それも面倒というなら、Macはリセールバリューが高いので、最悪売りに出してしまってもよい。Windows機よりも、比較的時間が経っても高く売れる傾向にある。

とにかく、Macに少しでも興味があるのなら、MacもWindowsも、両方使ってみるといいと思う。

ちなみに私は、iMacとMacBookを所有しているが、どちらも仮想化ソフトを入れてWindowsも使えるようにしている。macOSの気持ちよさやWindowsの実用性、そしてそれぞれにしか対応していないアプリの、「いいとこ取り」をすることができるからだ。

幸い、昨今はアプリもサブスクリプションが多く、Microsoft OfficeやAdobe Creative Cloud、ATOKなどの主要ソフトはWindowsにもMacにも、ライセンスを変更することなく両方で使えるようになった。また、ブラウザさえあれば、OSを問わず主要なことは何でもできる時代になった。

Windowsを捨てられないが、Macに興味があるという人は、ぜひ試してみてほしい。

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