私は、どちらかというと非効率なことや手間がかかることはできるだけ避け、効率を重視するタイプだと思っています。
例えば、文字入力に関してはできる限り効率化を図ります。以前このブログでは、キーボードであれば親指シフトを、スマートフォンであればフリック入力を習得して入力のスピードを高めたり、単語登録を活用してタイプする文字を少なくしたり、日本語入力ソフトを変えて変換効率を高めたり、という記事を書きました。
これらはすべて「文字入力の効率を高める」という目的があってのことです。
効率化は絶対ではない
しかし、何でもかんでも効率化することに抵抗がある人もいると思います。もちろん無駄なことはできるだけやめた方が望ましいとは思いますが、効率だけを追求すると、なんとなく心の余裕がなくなってしまいそうな気がしますね。
例えば、インターネットが普及した現在、手書きの手紙や年賀状は時間もお金も手間もかかって非常に非効率です。しかし、完全に世の中から年賀状や手書きの手紙がなくなってしまったとしたら、それはそれで寂しい気がします。
または、質のいいものが安価に買える時代に、一つのものを買い、繰り返し修理して長く使うというのも、非効率です。新しいものを買った方が、メンテナンスに時間とお金と手間をかけるよりも、一般的にはコストがかからないからです。一方で、それなりにこだわりがある品については、「いいものを長く使う」というスタイルでいる方もいらっしゃるでしょうし、そうでなくても、そうした生活スタイルに憧れを持つ人は多いように思います。
一般的には、やるべき事を効率的にこなせば、より生産的なことや大切なことに時間を使えるようになりますから、効率が上がることで仕事や生活の質も上がると言えます。しかし、ここに挙げた例のように、効率化を追い求めても、必ずしも生活や仕事の質が上がるとは限らないこともあります。
効率化とライフハックは同じこと?
さて、このブログのメインのコンテンツは、ライフハックに関することです。もともと私がライフハックに興味を持った理由は、物事を効率よくサクッと済ませるノウハウを数多く知りたかったから、という部分があります。
先ほどの例に戻ると、「文字入力の際に単語登録を活用する」などがそうです。まさに、物事を効率よくサクッと済ませるノウハウですよね。
では、冒頭の例のような「年賀状や手紙を一切やめる」「ものが古くなったり壊れたりしたら、さっさと新しいものに買い換える」というのもライフハックと言えるでしょうか。確かに効率的に時間を生み出せるハックではありますが、これをライフハックというのは非常に抵抗感があります。
そこで私が考えたのは、ライフハックって何だろう、ということです。
そもそもライフハックとは
ライフハックの定義
「ライフハック」という言葉に定義はあるのでしょうか。手元の大辞泉の辞書を見ると、以下のように書かれています。
仕事の質や効率、高い生産性を上げるための工夫や取り組み。(中略)いわゆる仕事術、生活術を指す。
基本的には、生産性を上げる、ということですが、ちょっと定義があいまいですね。インターネット上で調べてみても、それぞれのサイトによって定義はあいまいでぼんやりしています。おそらく、人によってそれぞれ定義は異なると思います。ライフハックに関しては、いろいろな書籍やインターネット上の記事が出ており、それぞれ十人十色の内容となっています。
3つのタイプのライフハック
私はライフハックに関する記事や書籍を好んでよく見るわけですが、いろいろ見ていく中で、ライフハックというのは、ざっくりいうと3つのタイプに分かれるなと思うようになりました。
- 主に生活に関する課題を意外なもので楽しく解決することが目的のもの
- 日常生活や仕事などの効率を上げることが目的のもの
- 人生の質を上げることが目的のもの
以下に、簡単に解説します。
主に生活に関する課題を意外なもので楽しく解決することが目的のもの
1番目のこのタイプは、「裏技」と言い換えることができると思います。本来別の用途に使うものを転用して、意外なものに活用できる、といったタイプのものです。「○○の意外な活用法」みたいなものですね。こちらは、効率や実用性よりも、意外さや面白さの方が求められるように感じます。インターネットでよくシェアされるライフハックは、こういうタイプが多いです。
日常生活や仕事などの効率を上げることが目的のもの
2番目のこのタイプは、日常生活でいうなら「時短テクニック」、仕事でいうなら効率化や生産性を高める「仕事術」と言い替えることができると思います。1番目のライフハックよりは真面目で実用的です。一般書籍でよくみるライフハックは、このタイプのものが多いように思います。
人生の質を上げることが目的のもの
最後に、3番目のこのタイプは、効率というよりは、その先にある人生の質を上げる、というところにフォーカスを当てているものです。抽象的で意味するところが広く、2番目のライフハックと似ている部分もありますが、ここでは人生の質が高まるなら、非効率なことも含まれるという違いがあります。逆に、効率的であったとしても、結果的に人生の質が向上しないのであれば、この定義のライフハックには含まれません。
この3番目のライフハックは、乱暴に言うなら、「意識高い系の考え方」に通ずるところがあるように思います。単なるハックだけではなく、「人生をよりよく生きるために始めたいたった一つのこと」みたいなものも含まれるかもしれません。こうした理由から、「ライフハック(笑)」と一部から嘲笑される対象になっている感があります。
大切なのは、人生の質を上げるためのライフハック
しかし、やはり私が大切にしたいのは3番目のライフハックです。この人生の質を上げることが目的のライフハックは、裏技的な意外さ・面白さだけで消費され、結局実行されないライフハックや、効率化重視で一見有用そうでありながら、それと引き替えに大切なものや貴重な時間を失うライフハックとは違います。
「年賀状や手紙を一切やめる」「ものが古くなったり壊れたりしたら、さっさと新しいものに買い換える」というのは、効率的ではあっても、(もちろん人それぞれという前提はありますが)それで人生の質は上がるとは思えません。ですから、3番目の定義に従うなら、これはライフハックではないということになります。
そんなことは当たり前だ、と思うかもしれませんが、特にライフハックが好きな人ほど、一見効率的に見えても、人生の質の向上には寄与していないライフハックを取り入れてしまっている傾向はないでしょうか。
効率を追い求めるだけのライフハックを卒業する
効率を追い求めるライフハックを追求した結果、他の大切なことを犠牲にしていないか、ということは、意識的に注意して考える必要があります。例えば、効率化ツールの習得のために、結果的に非効率な時間と手間を費やす、というのは、気をつけていないと陥りがちなことだと思います。
あなたが今取り入れようとしているライフハックは、部分的には効率化が成立したとしても、全体として見たときに、果たして人生の質は向上していると言えるでしょうか。効率化は目的ではなく、あくまで人生の質を向上させるための手段です。それを忘れないようにしないといけません。
逆に言うなら、効率化をするための取り組み自体を楽しいと思うのであれば、そのために多くの時間を費やしたとしても、結果として人生の質を上げることにつながるかもしれません。
まとめ
大切なのは、ライフハックらしきものに出会ったとき、「これは自分の人生の質を向上させてくれるものか」と一呼吸置いて考えることだと思います。
自分の人生を向上させてくれるものだ、と思えば、それは非効率なものであっても、ライフハックとして取り入れる価値があるものであると言えます。
そういう意味で、ライフハックというのは、主観的なものだと思います。ある人にとってはライフハックであるものが、別のある人にとってはライフハックではないということが起こりえます。
要は「目的と手段を取り違えないようにしよう」という、よく言われる警句につながる話なのですが、これがなかなか難しいんですよね。
ライフハックというのは曖昧なことばで、その解釈にはさまざまなものがあります。そのことで、結果として取り入れるべきでないことを取り入れてしまったり、「ライフハックなんてくだらない」という考えに陥ってしまう人も多いのではないかと思います。
本来、ライフハックというのは、自分の人生を豊かにしてくれるスパイスのようなものだと思います。それ単体では意味がありませんが、効果的に使えば、より料理をおいしく魅力的に仕上げることができるものです。一方で、使いどころや組み合わせを間違えれば、その料理を台無しにしてしまう可能性もあります。
ライフハックだからと、何でも無批判に取り入れたり、逆に必要以上に批判的になるのではなく、うまく付き合っていきたいな、と思っています。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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